修理と補修 | 2022年11月30日(水) 8時43分 |
さあさあ、Jun Sugawara氏からのFoth-Flexの修理も大詰めに。 3日目です。
貼り革の補修からスタート。あまり細かいところを触ると、接着剤がコンニチワしてしまうので、大きいハガレの部分だけを処理します。 いつものG17を使用。基本的にこれ以外を使わない。瞬間接着剤なんて以ての外である。
接着したら、昨日のままにしていた各種操作系を組付け。 シャッターメカの不調があるので、1個とか2個ほど部品を取り付けるごとに、必ず動作チェック。
こんな感じで動作確認をする。
ファインダーガラスを載せて。
隠しねじを締め、固定。但し、この状態では不完全。 ガラス固定用のネジがあるはずなのだが、元から2個ほど紛失した状態だった。仕方ないので出来る範囲で締めておく。 どちらにせよ、ピントフードを載せたら固定されるので、まあ、そんなにクリティカルではない。とはいえ流石に気持ち悪いので、代替品を探すが……。
ない。断言。過去に完全にぶっ壊れてどうしようもないカメラを潰した時の部品を確保しているのだが、それでも適合するネジが無い。 戦前カメラに戦後規格のネジなんて、まあ、そうそう合わないよなぁ。ピッチよりも径のほうが合わないし、適合しても今度は長さが全然違う。1時間ほど格闘したが、諦めた。
ひとまず室内でファインダー確認。うん、まあ大丈夫そう。ただ、めちゃくちゃ暗い。これを直すには、 1.ビューレンズ側の表面鏡の反射率をもっと良いものにする 2.ファインダーのすりガラスを更に良いものにする 3.フレネルレンズを入れる ……が考えられるが、とりあえずオリジナル性の保持を優先しているので今はまだいいか。
ダミーを入れて実際に回し、シャッターがちゃんと切れるか確認する。 カウンターは途中まで回った。最後まで回らない理由は分かっていて、これはダミーで、ネガは抜いてある、ただの裏紙だから。カウンターのリセット動作に支障はなく、まあ仮に動かなくても赤窓で確認すればいいだけなんだけれど。
ここまでで、ひとまず動かせる事を確認。リバーサルは流石に無理だが、ネガなら大丈夫だろう。 あとは、モルトの補修作業(左側のウラブタ、黄色いところが明確におかしい。剥がれているか剥がされたか)を行い、最終チェックしてネガを詰めて試写します。
で、この記事を書いている最中にふと思い出して撮影。
これ見て。一番肉の厚い銘板が、ぐにゃりと曲がっている。鉄板だぞ。そこいらの道具で直せない位に硬いのに、それが曲がっている。
道理でピントフードの取り付けがうまくいかない訳だ。 これ、ピントフードの開閉が正直硬くて、フリーの時(取り外して単品検査の時)はストレスなく動くのに、本体に取り付けると給油しても動きが悪い。取り付けを間違えたのかと1時間ほど確認して、出た結論が「ピントフードが銘板に押されて歪んでしまっている」という。 恐らくだが……非常に強い衝撃を受けたか、長期間何か重いものでも乗っていて負けたか。直そうと努力をしてみたが、迂闊に力を掛けると確実に「もぎ取れて」しまうし、叩けばミラーやガラスが粉砕するので叩いて直すことも出来ず。万力……のようなものは手元にはないので、これは許容するしかない。
シャッターユニットの歪みといい、銘板の歪みといい、かなり過酷な状況に置かれていたのは間違いない。 少なくとも、輸送中や保管中の事象ではない。衝撃を受けたなら、真っ先に割れるものが割れていないから。 あと、誰かが何か手を入れている気がするんだよね、この子。 ネジが足りないのは、まあ仕方がないが。
そんな訳で、4日目に突入。 あとやる事はそんなに大した話ではなくて。モルトの貼り換えと遮光確認、気が向いたら皮革にちょっと油を馴染ませてあげるとか、そんな程度。底面のサビが酷いが、ここはあえて補修見送り。錆びているが根は浅い、そして浅く広いからこそ面倒な状況で。ま、それが原因でもげることは無いと思うのでピッカピカにするより、動くか・撮れるかが最重要なので。そこは勘弁してください。 |