■この時代のフイルムカメラの買い方 21世紀も10年をとうに過ぎ、デジタルカメラが主流となり、携帯電話には小指の爪ほどの大きさで凄まじい性能を発揮する撮像素子が搭載された。 そんなこの時代において、今更フイルムカメラに触る必要があるのだろうか。 答えは、ある。 ■まずはフイルムと撮像素子について デジタルカメラが高性能化しているのは周知の事実だし、何より便利だよね。その場で確認できるし、連写してもメモリーがいっぱいにならない限り気にしない。便利だ。 そういう点はデジタルカメラのほうが有利。 対して、フイルムカメラのほうはちょっと不便だよね。一度撮影したら巻き戻して撮り直しなんて出来ないし(意図的に行う場合は多重露光という。この場合、巻き上げずにもう一度シャッターを切るので巻き戻しはしない場合が殆ど。実は最近のデジカメでも多重露光出来るやつがあったりするけど)、その場で確認できないから現像しないとわからない。24枚・36枚撮ったら1本おしまい。 じゃあ、フイルムカメラのアドバンテージは何所にあるのか。それは解像度の高さにある。 ■画素数勝負なんて……デジカメだけにしない? 135フイルム(35mmフィルムという、普通のモノクロとかカラーネガフィルム)の場合、1mmあたり120ライン程度、画素数だと240くらいの画素数があると言われている。24×36mmだと、ざっくりと計算するだけで4000万画素クラスの解像度がある(実際に計算するにはインチからセンチへの変換とか、CCDの色素子の並び順とかも計算しないといけないので、細かい計算式は割愛。ただ、デジタルカメラの1ドット(点)はフイルムでは3色まとめて載ってるから、3ドットで計算する必要があるのは分かるね?)。 リバーサルフイルムで最も条件良く、解像度を目一杯まであげると、2億画素を超えます。 ブローニーフイルム(120フイルム)ともなると、同じ3:2の6×9cm判ともなると56mm×118mmとなるので、さらに桁が1つ上がりますね。 また、ラティチュード(表現領域)に関するデータ量もフイルムのほうが膨大で、中堅デジタル一眼レフカメラで10ビット程度、ちょっと良いと12ビットくらいの色再現能力がありますが、フイルムのほうはアナログですから、明るさゼロからマックスまで、無段階で表現できます。 ※小噺 カメラのビットはプログラミングで表現する場合、内部的にはおそらくushort(アンサインド・ショート、符号なし16ビット整数)となります。符合とはプラスマイナスのことで、カメラでは完全な光のないダークを0として扱う(はずな)のでマイナス値を使わないので符号なし。表現できる数値は0から65535の65536個です。(0も「カウントする数」として含まれるので、65536個です) 携帯電話ではおそらく8ビット(0から255の256階調)、10ビットのカメラなら0から1023までの1024階調、12ビットなら0から4095の4096階調で計算していると思われます。これは1色あたりの情報ですから、RGBで表す場合、この数値の3倍がカメラで表現できる諧調ってことになります。 ちなみに私の持っているCanon EOS 60DはRAWで14bitだそうで。16384階調の表現が出来るそうです。 更に話をややこしくしておくと、デジカメでRAW(生データ)でいくら諧調が多くても、画面で出る諧調は、編集時には大概8ビットになります。(256色×RGB) 更に絶望的な話をすると、インクジェットプリンターで印刷した場合、大体はもれなく24ビット(各色8bit)になります。 つまり、フイルムカメラとデジタルカメラを競わせるのはほぼ無意味です。 ちなみに、最近のラボで現像して紙焼きしてもらうと、コンピュータに取り込んでからレーザーで焼くので、やっぱりフイルムの特性を活かしきることはできません。デジタルカメラの画像をラボに持ち込んでも同じです。 フイルムスキャナで読み取れば、というのもアリですが、だいたい24ビット(約1670万色、正しく述べるなら16,777,216色くらい)で、これは1色あたり8ビットなので256階調読み取り。これを上回る能力は業務用高級機くらいにしか付いていないでしょう。 ■閑話休題 さて、この時代のフイルムカメラの買い方ですが、まっとうな商売をしているカメラ屋さんに行き、ジャンクではないカメラを探して買うことになります。 例えばCanonのEFマウントのレンズを持っている人なら、Canonのフイルムカメラを買うことになるでしょうが。 別に筐体(本体)は何でも良いと思います。ただ、 ・電池が2CR5を必要とする→くっそ高い電池です、しかも使い切り。 ・電池が水銀電池を必要とする→製造終了しています。一応動かす方法はあるけど ・フイルムがAPS→もうフイルム売ってないよ、たぶん。 これくらいは注意して買ってほしいと思います。理想はアルカリ乾電池式か、LR44で動くカメラ。LR44に似たSR44というものもありますが、こっちは普通に売っているけど電圧が違う、ぷちレア電池。ご注意を。4LR44というのはLR44を4個直列に接続した電池ですが、LR44を重ねて入れれば良いというものではないので、こちらも注意。 カメラそのものは結構安いです。フイルムカメラは前時代的という烙印を押され、全盛期に10万円を超えるようなカメラも量産型ならば現在では1万円から2万円、高くても5万円しないでしょう。 ジャンクや動作未確認のカメラは買わないように。自分で修理できるなら、このページなんて見る必要はないでしょうけど。 レンズ交換できないカメラで、電池が要らないカメラは使っていて楽しいですが、露出とか光量というものを把握できないと(例:露出計とかを持っていないと)出来上がった写真はアンダーで真っ暗か、オーバーで真っ白、というのも普通に考えられる話です。セレン搭載カメラは太陽電池搭載カメラみたいなものなので電池不要で電気を使って動くカメラですが、劣化しているとガラクタになります。 入手に関して、例えば東京とか大阪まで足を運ぶ必要はありませんし、有名な個人経営のような中古販売店に行く必要はありません。足元を見られます。大手カメラ店の中古コーナーとか、ネットショップもあります。移動手段にお金を掛けずに、カメラとフイルムにお金をかけたほうが良いです。 個人的おすすめは、質屋さんを回ることでしょうか。質草となったカメラがあれば、ちょこっと値は張るかもしれませんが、質草になるようなものは良品が多いですから、思わぬ掘り出し物が見つかるかもしれません。 ジャンク籠から「これいいなぁ」と言うようになるには、カメラ修理のスキル必須です。 正直、私でもそこまでのスキルは持ち合わせていません。 逆に、スキルを磨くためにジャンク籠に突撃してもいいかもしれませんが・・・。 |
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