修理と補修 | 2021年10月 7日(木) 2時47分 |
Twitterで、様々な巡りあわせの末に知り合った、Jun Sugawara氏から頂いたジャンク……というより不用品を直していくコーナー開始。 本当は今年は調剤のほうを勉強していく予定だったのだが、予定変更。ちなみに家族のリハビリは最低でも11月までは確定。春先から何度も転んでいたし、まあ仕方がないのだが、とにかく時間がとりにくい状況が続く。
ので、出来る時間に、もちもち弄っていくことにした。毎日更新は出来ないものの、私のリハビリだと思ってのんびりご覧頂ければと思う。 私が触るカメラは基本的に、 ・電池を使わない(セレンはギリギリ) ・レンズシャッターである(幕走りカメラは守備範囲外) ・ライカは師匠の言いつけを守って触らない これが最低要件で、そこから先は気分とか、腕が上がってきたら、という感じ。そりゃまあKan師匠に色々なことを叩き込まれてきたけれど、専門はどっちかというと現像とか紙焼きとか調剤とかそこらへんで。稚拙な修理と思われるかもしれませんが、どうかご容赦を。
……早いな。もう、あの報せを受けた日から半年経つのか。
さて、本日はZeiss Ikon IKONTA 521のリペアである。リペア内容は以下の通り。 ・シャッター粘り ・巻き上げノブが筋肉仕様 ・二重露光ロック機構の機能不全
イコンタ521/2については色々なウェブサイトに情報が載っているので、あまり詳しくは書かないものの、1947年(昭和22年)から発売したという話と、1938年(昭和13年)に発売したという2通りの話がある。個人的には後者、つまり戦前カメラではないかとは思っている。 今回受け取ったものはレンズがテッサーではなくノバー(ノヴァー)のほう、廉価版のほうである。シャッター機構もいくつか種類があるようで、プロンター系とコンパー系、入り乱れているとか何とか。で、イコンタ521って6x9か6x6かと思ったが、手元にあるのは6x45である。セミ版ってやつ。 だらだら書くと話が逸れるので纏めると、 ・シャッタースピードは最速1/200、解放でF6.3ということで廉価版機種。最大絞り22。 ・スプリングカメラ(蛇腹)で、レンズはノヴァー。 ・赤窓式、距離計なし、ピントの距離指標はフィート表記 ・(追記)レンズは75mm、シャッターはKLIO
です。
まずはとにかくシャッターから。症状としては、1/50より遅い速度に設定すると、粘っているというか渋っているというか。そんな感じの症状で……1秒に設定してもおそらく1/5とか1/10程度のシャッター速度になってしまう。セルフタイマーは完全に粘りで、止まってしまう。 いつもの基本セットを採用。一滴のミシンオイル(ラウナ油は、そのうち買いたい)を、適量のナフサオイルで希釈してシリンジに吸い取り、粘りのある場所へ給油したり清掃したり。
ところが、そうこうしているうちにシャッターは切れるが、チャージ出来ない(厳密にはチャージするが、手を放すと勝手にシャッターを切ってしまう)という問題に遭遇。
原因はこれ。緑色のロックピンの動きが渋っている。 時折、こういう状況に遭遇する。しばらく動きが渋っていたものに給油したりすると、(油が回ってしまった訳でもないのに)いきなり動きがぎこちなくなってしまう部品。シャッターユニットを外して、まるごと超音波洗浄とかすればスッキリするのだが……この子にそこまでする必要は無いと判断。テンションの掛かり方を微調整したところ、なんとかなったので一先ず安心する。
リング周りも結構汚れていたので、綺麗にする。イレーサーを持っているが、これも道具のひとつ。しくじると塗装や表面処理がズタズタになるので(※サンドペーパーよりマシ)、詳しい使い方は未掲載とする。
巻き上げノブが筋肉仕様(とにかく力を入れないと回らない)というのは流石に運用上怖いので、多重露光防止機能の様子を見つつ分解して給油したり錆び落とししたり。 写真撮り忘れる。というかシンプルながら良く出来た構造で、巻き上げ部分を外して「おー」とか呟きながら10分くらい、動作を勉強。よく出来ているなぁ、と、しきりに感心していた。 ひとまず支障ないレベルまでノブが軽くなったので、あまり追い詰めないことにする。本来なら軸を磨いたりすれば軽くなるのだろうが、現状そこまで不便ではないので大丈夫。
最後に、レンズやファインダー、各部を磨いて良しとした。塗装がところどころ剥げているが、使っているうちに出る「味」だと思う。 何か、べたーっと塗料でも塗れば一応は綺麗になるが……今のところ、そういうことは、この子にはしないかな。
作業時間は、のんびりやって2時間ほど。完全な状態に追い込んでいくなら数日欲しいけれど、実用上まったく問題ないレベルに復活。
大切に使います。> Jun Sugawara様 |